即売会で文芸サークルを回って見本誌を読んでいるとき、どうしても紙面の文字が頭に入ってこないことがあります。中身を理解するより先に、ページを先に進めるのがなんか面倒だなーと思う瞬間があるのです。
そういう本の紙面に感じる違和感はいろいろ。文字が小さくて読みにくい、あるいは判型に対して不自然に大きくて目が滑る。字 間 が 大 き く てリズムが掴めない、あるいは狭すぎて窮屈でせっかちな印象になる。行間が広くて、狭くて……綴られているのはきっとよく練られた素敵なフレーズなのでしょうが、そんなページに置かれただけで陳腐な印象になる気がします。
余白の取り方もそうです。たいていの文庫本は上(天)と下(地)の余白がどちらかに偏っていて、ぴったり揃えた紙面には違和感を感じるはず。でも、世の中には明らかにワープロソフトで適当に決めた余白の同人誌が出回っています。本の構造上、綴じ側(のど)は外側(小口)より大きな余白になるのが普通ですが、たまに行がのどにぴっちり食い込んで読みにくい同人誌も見かけます。
様々なデバイスで文字を読める今の時代に、わざわざ紙あるいは紙を模した平面で作品を発表するなら、できるかぎりその意味にこだわりたいところです。文章をただテキスト情報として伝えたいだけなら、読者にレイアウトを任せるリフロー型の電子書籍メディア1を使うのがお互いに最適であって、わざわざ柔軟性もなく利便性も低い紙束を配る必要はないでしょう。
では、よい紙面とは何か? それをどう作るのか? その答えは非常にシンプルで、自分が読みやすいなと思った本を真似すればよいのです。文字の大きさ、行数、余白はどうなっているか、ノンブルや柱はどこに入っているか、などなど。
具体的には、以下のような10個のチェックリストを埋めていくのがよいでしょう。この記事を印刷したり、コピーしてメモアプリに貼り付ければチェックリストとして使えます。
- ① 本の判型(大きさ)は?
- ② 文字の大きさは?2
- ③ 1行に何文字くらい入ってる?3
- ④ 1ページに何行くらい入ってる?4
- ⑤ 版面(文字が印刷されている部分)は何mmある?
- ⑥ 天(上側)の余白は何mmある?
- ⑦ 地(下側)の余白は何mmある?
- ⑧ 小口(外側)の余白は何mmある?
- ⑨ ノンブル(ページ番号)はどこに入ってる?
- ⑩ 柱(ページのタイトル・見出しなど)はどこに入ってる?
実際の紙面に合わせるとこんな感じになります。

なお、版面の大きさを指定できず、代わりにのど(内側)の余白で配置を決めなければならない場合は、判型の横の長さから版面の横の長さと小口の余白を引くと、のどの余白が分かります。
チェックリストが埋まったら、これらの情報を元にお手持ちのワープロソフトや組版システムでページを調整します。もし自分の文芸同人誌でこのような点を気にしたことがなければ、まずはその同人誌の 測定 から始めるとよいでしょう。この記事では10個のチェックポイントに絞りましたが、本を眺めて気になった点はどんどん確認するべきです。扉はどんなデザインか、目次をどのように入れているか、どちらのページから始まっているか、などなど。
冒頭で触れた「目が滑る同人誌」は、そういうちょっとした観察や読者としての視線を感じない本だ、とも言い換えられます。本が読者に与える印象は、表紙のロゴタイプの綺麗さやイラストの エモさ だけで決まるわけではなく、ぱらぱらと立ち読みしたときの紙面の印象でも大きく変わるものです。
調整が終わったら、最後に見開きの一面(2ページ)で等倍に印刷してチェックしてみましょう。文庫本はA5サイズに、A5版はA4サイズになりますが、どちらもA4に印刷してかまいません。コンビニでのPDF印刷では「用紙に合わせる」ような設定を外すボタンが分かりにくいことがあります。
さて、新しい紙面は違和感なく仕上がりましたか? 調整前の紙面と見比べると、その違いをより意識できると思います。今回紹介したチェックリストが、あなたの素敵な作品を仕上げる際の参考になれば幸いです。
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デバイスの画面サイズやウィンドウの大きさ、フォントサイズの設定に応じて再レイアウト(reflow)できる形式です。PDFのように決まった紙面を拡大・縮小するのではなく、ブラウザで文章を読むような体験を提供できます。テキストデータを含むので、検索機能や読み上げ機能とも相性がよいです。 ↩
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読んでいる本の文字サイズがわかるしおりなどがあれば、大まかなサイズ感を掴むのが楽になります。 ↩
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記号類が占める大きさが違ったり、禁則処理などで追い込まれたり追い出されて1行の文字数が変わることがあります。周囲に禁則文字がなく、正方形の空間を占めるふつうの文字の行で比較するとよいでしょう。ここから字間を逆算できます。 ↩
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大きな文字の見出しやその周囲の余白、あるいは脚注が入って1ページの行数が減ることがあります。ふつうの本文のみで占められたページで比較するとよいでしょう。ここから行間を逆算できます。 ↩