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生涯メールアドレスの実質的終了によせて

筑波大学の生涯メールアドレスに付属するGoogleサービスの大幅な縮小が通知されたのは、先日12月28日のことです。この制限は、生涯メールアドレスの運用ツールであるGoogle Workspace for Educationのポリシー強化によるもので、サービス維持のための措置と説明されています。

生涯メールアドレスについては、昨年も容量無制限のストレージ(通称 無限ドライブ )のサービス縮小が発表されて大きな失望と落胆を誘いましたが、今回はより致命的な制限が適用されることになりました。具体的には、来年2023年1月23日からドライブ、フォト、その他ドキュメントをアップロード・新規作成する権限が剥奪されます。これまでの生涯メールアドレスとは全く異なるサービスになったと言えるでしょう。

●全てのユーザーへの利用制限の開始について
 開始日:2023年1月23日(月) 0時00分
●利用制限の内容について
・新しいファイルや画像を Google ドライブにアップロードできなくなります。
・コンテンツの共同作成アプリ(Google ドキュメント、スプレッドシート、スライド、図形描画、フォーム、Jamboard など)でファイルを作成できなくなります。
・写真や動画を Google フォトにバックアップできなくなります。
・Google Workspace for Education アカウントへのログインとアクセス、ファイルの閲覧とダウンロード、Gmailの送受信は、引き続き行えます。
【重要】【2023年1月23日から】筑波大学生涯メールアドレスサービスの利用制限について

無限ドライブの消失以降は、rcloneを使って日次で小さなバックアップデータ(5GB程度)を置く程度の穏やかな利用に留めていましたが、1月以降はこれらのデータも更新できなくなってしまうので、スッと別のクラウドストレージに逃がしました。Dropbox Backupを騙して大量のファイルをアップロードしようとするような 抜け道 好きな人たちなら、これからもメールの添付ファイルなどのチャネルを利用して20GBのストレージを有効活用するのかもしれませんが、僕にはそれほどの熱意はありません。

在籍していた学生や教職員が 生涯 にわたって使えるメールアドレスを配布する「生涯メールアドレス」と呼ばれるメールサービスは、筑波大学だけではなく多くの大学で提供されています(東北大学神戸大学工学院大学など……)。しかし、これらのサービスは数十年にわたって運用できるように設計されたものではなく、単なるブームを受けて、あるいは思いつきで導入された一時的な(我々の生涯に比べれば)サービスであると考えるべきでしょう。実際、いくつかの大学ではサービス終了あるいは新規受付の停止など、悲しい結末を迎えています(新潟大学北里大学など……)。

もともと、メールアドレスは永久に使えるように設計されたものではないのです。メールアドレスのような @ 以降のドメインと一体になったIDの寿命は、組織や組織が提供するサービスの寿命と一致します。この寿命の制限から見れば、組織に在籍している間だけ当該ドメインのメールアドレスを使える方が自然です。これは、分散SNSにおけるIDについても同様で、自ら立ち上げたインスタンスでない限りは同様の運命を抱えてしまうでしょう。

特定のインスタンスやサーバーのドメインをIDに含まない方式としては、自ら生成した秘密鍵・公開鍵のペアからIDを生成するToxNostrが挙げられます。これらのサービスは、P2Pあるいはリレーを用いて特定のサーバーを利用せずに通信を行うものであり、少なくともナイーブな「生涯メールアドレス」よりもスケールしやすく頑強なシステムを採用しています。つまり、自分の 生涯 にわたって使えるIDとは、特定のドメインに頼らず完全に自力で生成したIDに他なりません。

さて、今回生涯メールアドレスの実質的な終了が告げられた12月28日は、奇しくも昨年2021年にこの生涯メールアドレスの大きな特典だった無限ドライブが廃止され、最大20GBそこそこのありふれたストレージに生まれ変わるという衝撃的な計画が発表された日と同じです。我々は今、筑波大学に在籍したことがあれば 生涯 にわたって使えるはずのサービスが1年ごとに削減されていく悪夢の最中にいます。

最大限に好意的な解釈をするなら、「『生涯メールアドレス』なのだから、メール以外のサービスは元々おまけでしかない」という反論ができるかもしれません。しかし、こうしてGoogleの都合によるサービス削減を繰り返している状況で、メールサービスだけが無事であり続けられるとどうして言えるでしょうか。来年の12月28日には、ドライブやフォトの閲覧さえ制限されるどころか、生涯メールアドレスの完全終了が告知されても驚きはありません。

いずれにせよ、これから12月28日は筑波大学の生涯メールアドレスの衰退を象徴する記念日として思い出されることになるでしょう。最後に、昨年の無限ドライブの終了告知を受けて書いたあまねけ!ニュースレターを再掲して、生涯メールアドレスへの弔いとします。

再掲: 無限ドライブの消失によせて(2022/01/04)

/* あまねけ!ニュースレター #15より */

筑波大学の生涯メールアドレスに付属する容量無制限のストレージ(通称 無限ドライブ )のサービス縮小が通知されたのは、昨年2021年の12月28日のことです。この生涯メールアドレスはGoogleのGoogle Workspace for Educationの上で運用されており、2022年7月以降のサービス提供内容の変更(少なくとも組織全体で100TBが上限となった)に追従することになりました。

この変更により、2022年3月以降は個人のストレージ容量がおよそ20GBに制限されることになります。僕個人では、ほとんど使わないけれど家に置くには大きい録画の生データなどをドバッと置いていましたが、エンコード済みのデータは手元にあるのでほとんど削除しました。今は小さなバックアップデータなどで3GBほどを占めています。

当たり前のことですが、保存容量が無制限か、あるいは支払いが1回限りのストレージサービスはたいてい長くは続きません。

たとえば、Amazon Driveは2017年11月に容量無制限ストレージプランを終了していますし、Google Photosも2021年5月に容量無制限バックアップサービスを終了しました。Amazon Photosはまだプライム会員向けに容量無制限のフォトストレージを提供していますが、この件と同じようにいずれ何らかの制限がかかるはずです。

また、pCloudのライフタイムプランでは、1回限りの支払いで175ドル/500GBまたは350ドル/2TBのストレージを使用することができますが、長期的な目線で見れば収益化に行き詰まるでしょう。最終的には、運が良ければライフタイムプランの新規受付停止、悪ければサービス終了もありえます。

もちろん、あえてこのような1回払いのストレージをできるだけ早く購入して利益を得る(リボ払いの手数料を会員優待サービスに充てるような構造をねらう)戦略はありえますが、何年使えば月払い・年払いのストレージより安価になるのか、万が一サービスが終了した際にどのようにデータを移行すべきかについて、事前に考える必要があります。

ちなみに、僕は今のところSyncを使っています。8ドル/2TB/月(年払い)で、すごく安いわけではないです。特徴などについては、導入した直後の2021/07/01~2021/09/03のおしらせで書いていますが、ゼロ知識証明とエンドツーエンド暗号化がデフォルトのなんとなく安全っぽいストレージです。