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ミネラルショーに行ったこと

先日、12/9〜12/12まで池袋のサンシャインシティで開催されていた第31回東京ミネラルショーに行きました。こういう鉱物や宝石の即売会に行くのは初めてで、特段アクセサリー作りや宝石の鑑別に詳しいわけでもない(小さい頃にデアゴスティーニ 地球の鉱物 コレクションを十数号買ったことがあるくらい)のですが、いくつか かわいい アイテムを見たり買ったりしたので紹介します。

鉄分が少なく紫外線や緑色の光でも真っ赤に光る合成ルビーや、鋭くはっきりした光条を放つ合成スターサファイアは、初めての即売会でお祭り気分を楽しむにはちょうどいい宝石です。

紫外線で赤い蛍光を示す合成ルビー

3価クロムイオンが紫と黄緑の光を吸収して赤い光を放つ性質や、ルチルの結晶が規則正しく並ぶことで星のような光条が見えるスター効果といった現象は、写真や文章ではよく見かける比較的有名なものだと思います。しかし、これまで実際にこういう宝石を手元に置く機会はなかったので、今回入手できてちょっとラッキーでした。

裏に「70,000円」のラベルがある合成スターサファイア

裏に書かれた「70,000円」というシールが本来の値段なら、1000円台で購入したので驚異の98%以上の値引きということになります。宝石業界の商慣習はよく知りませんが、Amazonプライムデー方式の定価水増し手法かもしれません。

ブラックライトで蛍光する鉱物や宝石は、当然ながら目を引く属性として人気があるようです。強い黄緑色の蛍光を楽しめるウランガラスを使用した製品は、現代ではウランの扱いが難しく新品の製造量が非常に少ないので、アンティークのボタンや小物が活発に取引されています。今回購入したのは直径32mmほどのチェコのガラスボタン(中サイズ)で、ブラックライトを当てるとあやしい輝きを放つ素敵な品です。

紫外線で黄緑色に光るチェコのかわいいウランガラスボタン

他にも、現在では生産がほとんどなく骨董品的な価値が高まっている例として、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)と呼ばれるロシア製の鮮やかな黄色(カナリーイエロー)の合成宝石を何度か見かけました。こちらも紫外線を当てると黄色い輝きがさらに増すらしいです(参考)。YAG自体は黄色だけではなく、添加元素によって赤・緑・紫などに着色できる便利な素材のようですが、現在ではもっぱらレーザーの媒質としての生産しかありません。

さて、これらの合成宝石やガラス製品は、あくまで人間の制御下で意図して作られたものです。つまり、成分が理想的な範囲でよく調整され、精細なカットや装飾が施された美しい商品でした。

しかし、こちらの銅樹は人間の経済活動と偶然の化学反応が重なって生じた、ある種の半自然的な鉱物と考えることができます。精錬工場で生じた銅を含む蒸気が金属管を通る間に、異金属との接触によって銅が析出して成長したのでしょう。青い硫酸銅の結晶が付着して、木の枝に花が咲いているように見えるものなどもあるようです。

ルースケースに入った樹枝状の銅の結晶

もちろん、イオン反応による金属樹の成長という現象自体は中学生レベルの理科で触れるような内容ですが、「工場の排気管中に生じたもの。樹枝状の銅の結晶。酸で処理済。」というフレーバーテキストによって、建造物の中に隠された人の手が届かない場所で生まれる半人工結晶の神秘性・自然性が強調されています。

人間の活動と共に産出することを踏まえると、電脳コイルに出てくるメタバグのような概念に似ているかもしれません。鉱物という観点では、かつて東洋のスマラカタというお話を書いたことがありましたが、こちらはむしろ自然に近いより大きな存在でした。

このように半自然的な由来の鉱物としては、ポーランドの塗料工場の煙突に付着することで有名なジンカイト(紅亜鉛鉱)があります(参考)。天然では結晶の状態で産出する例が少なく、多くは工場の煙突内や鉱山火災などの人為的な環境で生まれるものです。およそ電気を通しそうにない透き通った綺麗な外見とは裏腹に、かつては鉱石ラジオの感度のよい検波器として重宝されていました。

今回の東京ミネラルショーでは、会場の特別展示や配布されたパンフレットの特集として合成宝石の歴史がまとめられていました。天然宝石の希少性や偶然の美しさに注目するだけではなく、このような美しさに近づくための技術や素材に思いを馳せたり、半人工石や半人工結晶といった人と共存する鉱物の神秘性を味わうことも、鉱物や宝石の楽しみ方の一つと言えるでしょう。